“Scorch Atlas”余談

 一応Atlas(地図)の話で始まり、Atlas(地球)の話で終えて統一をとっている。掲載媒体は見事にバラバラ、どれもマイナーだ。変に実験小説に傾倒せず、幻想性の強いものを書き続けてくれればいいと思う。ささやかなユーモア感覚も失って欲しくない。本書のサブタイトルは「手遅れな入門書(A Belated Primer)」なのだが、実はページをめくると他に13の副題があることがわかる。また作品の合間にはインク、芋虫、歯牙、光輝など人間を襲う奇妙な災厄が描かれたごく短い文章がはさまっているのだが、「糞尿」の回は「何があったか語りたくない」という一文だけで終わっている。

 出版元はシカゴに拠点を置き、若手新人の発掘に注力するFeatherProof Books。本書以外にも大量にスリップストリームを出しているので、今後もいろいろ買ってみようと思う。変な粗筋の本ばかりですばらしい。ロゴもすごい(しかしFeatherProofではなくてArrowProofじゃないか?)

 Butlerは他にノヴェラ“EVER”をインディーズ系プレスから出している。こちらの出版元はカラミティ・プレス*1。刊行物がどれも奇抜な表紙で、SleepingfishというZineを出しているところだ。私が前からブックマークしていたSleepingfishとは、

    1. 1.柴田元幸訳がある『雪男たちの国』を書いたノーマン・ロックの書評が載ったり、
    2. 2.Locus誌のメキシコのSFライターにインタビューする企画で、最近の注目株として挙げられた「ラファティを思わせる変な作風」のEdgar Omar Avilesの詩の翻訳が載ったり、
    3. 3.ConjunctionsやMcSweeney'sなどにも掲載暦があり、やっぱり変な話を書く人なのでつねづね読みたいと思っていたAdam Golaskiが載ったり、

 ……している、ただならぬミニコミ誌だ。EVERは比較的地味な感じだったからすっかり見過ごしていた。灯台元暗し。こちらも評判を見て、よさそうであれば試してみよう。

*1:災厄出版……。